大判例

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東京高等裁判所 平成10年(う)727号 判決

被告人 ヒマール・グルング

〔抄 録〕

(一) また、原審記録を調査し、当審おける事実取調べの結果を合わせて検討すると、原審で取り調べた関係各証拠を総合すれば、本件送金の仕組みは、次のようなものであったと認められる。すなわち、被告人は、一週間を単位とし、毎週日曜日の朝までに受け付けた送金依頼に基づいて、土曜日又は日曜日に依頼人らから送金受任額及び手数料に相当する現金を集金し、月曜日の朝に、外国送金に対する法的規制を免れるため、一週間分の送金合計額を五〇〇万円未満となるように分割して、日本の銀行数行から香港の銀行の数名名義の預金口座あてに日本円でそれぞれ送金した上、その日の夜に、ラジ及びサンティに対し、その週の依頼人氏名、受取人氏名、送金受任額等を連絡し、これを受けて、ラジ又はその依頼を受けた運び屋が、香港の銀行の各預金口座から、被告人からの送金をアメリカドルで引き下ろし、それにより香港で金の地金や電気製品等の品物を購入してネパールに持ち込み、ネパール国内でこれらの品物を売りさばいてネパールの通貨に換金した上、ラジ又はサンティが、換金したネパールの通貨をプール金として用意して、そのプール金の中から依頼先に現金を渡していたというものであった。

右認定のような送金の仕組みに照らし、被告人が、依頼人から受け取った現金を直接にラジやサンティのもとに送付し、ラジやサンティがその送金された現金を受取人らに渡していたものでないことは明らかである。いいかえると、関係各証拠によれば、原判決が認定判示するとおり、被告人は、ネパール王国に居住するラジ又はサンティに対し、国際電話等で、受任した依頼人氏名、受取人氏名、送金受任額を連絡してその旨の支払い方を連絡し、これに基づき、右各送金受任日の数日後に、同国内において、ラジ又はサンティが、右各依頼人の指定する各受取人に対し、ラジ又はサンティの保管する現金の中から、右送金受任額に相当する現金をネパール通貨で支払っていたとの事実が優に肯認できるのである。

(二) このように、本件送金の仕組みは、被告人及び共犯者らが、送金依頼人と受取人という隔地者間に立ち、被告人及び共犯者らの計算において、現金の送付を伴うことなく資金の移動を行っていたものである。しかも、その間に、日本円からアメリカドル、更には、ネパールルピーへの通貨の交換を伴うとともに、被告人から送金された資金により、物品を購入して送付し売却するという国際商品取引をも介在させるものである。そして、これら一連の取引に伴う危険、例えば、外国為替相場の変動や国際商品取引に伴う危険は、すべて被告人及び共犯者らが負うべきものであって、結局、本件送金の成否は、被告人及び共犯者らの経済的信用にすべて依存するものというほかはない。

そして、銀行法が、銀行の業務の公共性にかんがみ、信用秩序の維持、預金者等の保護及び金融の円滑を目的としていることに照らすと、同法二条二項二号にいう「為替取引」とは、隔地者間で直接現金の送付を伴うことなく資金を移動する仕組みにおいて、この為替の作用を有する取引行為を包括的に指すものと解した上、本件送金が右為替取引に当たるとした原判決の判断は、正当として是認することができるのである。

(松本時夫 中谷雄二郎 高橋徹)

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